遺言の中身と効力

こんにちは、くろしば司法書士事務所です。
今日は遺言の話の2回目。遺言の中身と効力についてです。
「遺言って、亡くなったあとにどうして欲しい、って書いておくことよね?中身と効力ってどういうこと?」と思われるかもしれません。実は、遺言って、書いたこと全て、その通りにしないといけないとは限らないのです。ということで、そのへんを詳しく説明したいと思います。

まず、遺言というのは、基本、自分の財産について、亡くなったあとにどうしたいか、を書いて、死後、法的効力を発生させるものです(財産以外には、認知・後見人の指定・相続人の廃除・遺言執行者の指定などができます)。
遺言でできることは、民法その他の法律で決められてます。何でもかんでもできるよ、ってしておくと、ちょっと無理!ってこともありますよね。なのでちゃんと制限があるわけです。
じゃあ、法律で決まってること以外は書いちゃいけないの?というとそんな事はありません。「付言事項」なんて言いますけど、書くのは自由。ただ、法的効力は無いので、その通りになるとは限りません。例えば、「家族仲良くしてください」なんて書いてもその通りにできるとは限らないですよね…。あと、良くあるのが「葬式はこれこれこうしてください」みたいなの。法的効力がないのはもちろんですが、これは遺言じゃなくて、別のエンディングノートに書くとか、普段からご家族さんに伝えるとかしといてください。というのも、遺言って、お葬式終わって落ち着いてから確認しますよね。自筆で検認とかあると、申立から1ヶ月以上かかるのが普通と聞きますし、封してあると、それまで中身見られないですから。公正証書なら見られますけど、お亡くなりになってバタバタしてるときにいちいち確認してるヒマ、普通無いと思います。お葬式にこだわりがあるなら、生前に式場の会員になるとかして、プランも決めてご家族さんにどう手続したらいいか伝えておくのが最も確実です。あと費用の確保も忘れずに!

おっと、少し話が脱線したので遺言の話に戻します。
基本、財産について書くもの、なんですが、それについてもう少しお話を。
まず、「自分の財産」でないとダメです。つまり、自分の名義になっているものなので、不動産なら自己名義の登記のあるもの、預貯金なら自分名義の口座、といった具合。あと、「自分が亡くなったとき、自分名義の財産についてどうするか」なので、5年までなら遺産分割しないでね、は言えますが、そのあと誰かが相続したあとについては何も言えません(書いても無効)。
例えば、Aさんが、自宅について「妻Bに相続させる。妻Bの死後は子Cに相続させる」って書いても、後半、妻Bの死後のことについては無効になります。どうしてもその通りにしたければ、遺言による相続ではなく、信託の利用などを検討してください。遺言で信託の設定をすることもできますが、生前から受益者連続型の信託を設定しておくほうが確実性は高いと思います。信託の説明について、詳しくはまたそのうちに。

あと、「これこれをあげるから、代わりにこれしてね」っていうのもOKです。「負担付遺贈」と言います。例えば、「Dさんに1000万円を遺贈する。その代わり、愛犬ポチを引き取ってポチが死ぬまで面倒をみること」といった感じ。だけどこれ、例えばポチがすっごい大型犬で、飼育に特別な設備がいるので1000万じゃ割に合わない!ってこともあります。それでもDさんが自分の財産使ってポチの面倒みる義務があるとするとあんまりなので、遺贈でもらった分を超えない額の範囲で義務を果たしてね、って決まりがあります(民法1002条1項)。

ついでに言うと、普通、法的効果を発生させる法律行為って、お互いにこうしましょうね、って合意があることがほとんどなんですよね(例:契約)。だけど、遺言は「単独行為」と言って、相続するヒトとか、遺贈されるヒトの意思と関係なく、遺言するヒトが一方的に決めちゃってるわけです。なのに、必ずそれに従わないといけない、となるとちょっとヒドくない?と思いますよね。
そこで、相続人さんは「相続放棄」、遺贈を受けるヒトは「遺贈の放棄」ができるようになってます。ただし、遺贈のうち、特定の財産についての遺贈はいつでも放棄ができるんですが、「相続放棄」や「包括遺贈の放棄」は自分がもらえるって知ってから3ヶ月以内でないとできません。また放棄は、ちゃんと家庭裁判所で申述しないとやったことにならないので、気をつけてくださいね。
あと、「これは欲しいけどあれはいらない」なんて都合の良いことはできません。全部もらうか全部もらわないか、しか言えないことには注意です。
ちょっと話ズレましたが、つまり、遺言に書いても放棄されたらその通りにはなりません。
その通りにしてほしいな、と思うなら、「事前に伝えておく+了解を取る」ことが大切です。形式的には単独行為ですけど、遺言のせいで家族不仲になっちゃった、なんてこともあるわけで、遺言者さんの希望通り、円満に相続完了するためには、生前の根回し?が必要です。

あと、遺言の中身、というか形式というか。
ちゃんとひとりずつ書いてくださいね。夫婦とか、2人以上で共同遺言はダメ、って民法にガッツリ規定されてます(民法975条)。まあ、わかりにくくなるのを防ぐためとか、本人以外の意向が入ることを防ぐためなんだろうな、と思います。

こんなふうに、前回遺言のいろいろで書いた形式面だけでなく、中身もきちんと検討しないと、書いたはいいけど、その通りにならない遺言になってしまう恐れもあるわけです。それを防ぐためには、公正証書遺言にするとか、弁護士さんや司法書士に相談することをオススメします。もちろん費用は発生しますが、自力で調べる手間や時間の節約及び確実さの対価と考えると、結構安いのでは、と思います。

と、今回は遺言の中身と効力について、でした。
次回は「遺留分」にしようかな。またお読みいただければ幸いです。

※参考文献
新プリメール民法5 家族法 床谷文雄 他 著
ユーリカ民法5 親族・相続 田井義信 監修  小川富之 編

コメント